宝井理人『花のみぞ知る』のネタバレ＆あらすじ！苦しいほどの恋のゆくえは？

2021-04-28

BL漫画『花のみぞ知る』を実際に読んでみました！ネタバレを含むあらすじをこっそり教えます。感想、見どころについてもすべてお伝えしますよ！

『花のみぞ知る』は、宝井理人が原作者です。大洋図書の『CRAFT』で掲載されました。大学の構内で、好奇心旺盛な法学部の有川洋一（ありかわよういち）と、真面目だけど少し抜けている研究熱心な学生、御崎詔太（みさきしょうた）は、偶然出会いました。そして彼らの二度目の出会いは、ある雨降る夕暮れの駅。二人の距離は少しずつ近づいて…それは苦しくなるほどの恋でした。

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『花のみぞ知る』漫画情報

 

『花のみぞ知る』のネタバレ含むあらすじ

有川洋一は法学部に通う大学生。友人と他愛のない話をしながら校内を歩く彼の前に通りかかったのは同じ大学の農学部に通う御崎詔太でした。

派手に転び、持っていたたくさんの植木鉢を地面に落としてしまった御崎を見て有川は友人に先に行くよう促し、自分は落ちた植木鉢を拾う手伝いをします。その時に有川は御崎のしているネックレスに気づき、「似合ってるよ」と告げました。それが彼らの一度目の出会いでした。

二度目の出会いは駅の構内でのことです。コンタクトが合わずに外していた有川はぼやけた視界で誰かとぶつかってしまいます。それは急いでいたため走っていた御崎でした。慌てていた彼は自分のネックレスが有川の荷物に紛れていることに気付かず、また有川もほとんど何も見えていなかったためぶつかった相手が御崎だとわかりませんでした。

その日から有川は頻繁にネックレスと「ミサキ」の夢を見るようになります。その後、紆余曲折ありながらも有川は教授の頼みで御崎の所属する研究室の手伝いをすることになりました。有川と御崎の距離は少しずつ縮まっていきますが、同時に彼らを様々な悩みが襲います。

有川は御崎のことになるとつい感情的になってしまい、今まで自分をコントロールできなかったことなんてなかったのに、と初めての感情に戸惑うことに。

そして御崎は過去のトラウマと向き合うことになります。事故で両親を亡くした御崎は植物の研究をしているという祖父の家に引き取られて過ごしていたのですが、高校生になった年の夏、そこで川端聡という男と出会います。

家庭教師として、兄のような存在として御崎のそばにいた川端ですが、御崎の祖父の死をきっかけに関係は徐々に変わっていくことになります。御崎は川端に恋心を抱いていました。川端も御崎のことを好ましく思っていたのですが、「自分は普通でいなければならない」という思いから徐々に御崎への気持ちを歪ませてしまいます。

大学に進学した御崎は川端の異常なまでの束縛に悩むことになります。川端のことが好きだった御崎は恋心を拒絶したのにそんな行動を取ってくる川端の思いがわかりませんでした。

お互いには別の好きな人がいるという勘違いをし、すれ違い続ける御崎と有川でしたが川端が有川の前に姿を現したことによりその状況が一変します。

有川は「たとえ御崎が川端のことが好きでも御崎は渡したくない」と宣言し、御崎に思いを告げたのです。気持ちを確かめ合った二人は晴れて恋人同士となりました。

そして物語はクライマックスへと向かいます。川端との関係に決着をつけようとする御崎、そして有川。自分の心の奥底の思いに素直になった二人が本当の意味で気持ちを通じ合わせるのでした。

『花のみぞ知る』の見どころ

タイトルにも「花」とあるように、この作品では植物や花がキーとなる局面が多いです。例えば作中のキーアイテムとなるネックレスは花をモチーフとしており、このネックレスを巡った人間模様が展開されていく作品だと言っても過言ではありません。

実際の植物が活躍するシーンもあります。印象的なのは一巻の巻末にて描かれる有川と御崎が花の写真をやり取りするシーンです。有川が送った写真の花は「アガパンサス」という花です。「あなたが好きです」という花言葉を持つアガパンサスですが、有川はそれを知らずに綺麗な花だという理由だけで御崎に写真を送ります。

対する御崎は植物について学んでいるということもあり、アガパンサスの花言葉について知っていました。「有川が花言葉を知っているはずがない」と思いながらも御崎は図鑑にのっている、とある花の写真を有川に返信します。

御崎が有川に送った写真の花は何だったのか？花言葉はどんなものだったのか？という答えは三巻の巻末で明かされます。送ったのはデイジーという花の写真で、花言葉は「あなたと同じ気持ちです」というものでした。

他にもたくさんの花や植物が登場し、作品を美しく彩っています。花や植物の描写にも注目するとよりいっそう「花のみぞ知る」の世界を楽しめるのではないでしょうか。

『花のみぞ知る』を実際読んだ感想

読み終わった後の第一の感想は「なんて綺麗な作品なんだろう」というものでした。絵が綺麗だというのはもちろんなのですが、登場人物たちの心の動きや話の展開、全てが綺麗だと感じました。

有川と御崎、二人の主人公が初めての気持ちに戸惑い、ぎくしゃくしたり手探りで相手と関わったりしていく心の揺れ動きの描写も圧巻でした。ハラハラし、時には涙ぐみながらも二人を応援してしまう気持ちが抑えられませんでした。

この作品には「悪役」が登場しません。私の好きな登場人物の一人に、物語の最初に有川の彼女として出てくるかなみという女性がいます。有川の気持ちが自分に向いていないことに気付いていた彼女は、悩みながらも一巻の最後で有川に別れを切り出します。話の最後で彼女は涙を浮かべながらも微笑み、「今度は洋一も苦しくなるくらい好きになれるといいね、誰かの事」と有川の背中を押すのです。

かなみの有川のことが好きだという気持ちも、辛いと感じて少し有川に意地悪なことを言ってしまう気持ちも、それでも最後は笑って有川に別れを告げるところも、等身大の人間の感情が生々しく、それでいて綺麗に描かれていると思います。

この作品には有川や御崎といったメインの登場人物以外にも素敵なキャラクターがたくさん登場します。その全員がどこか憎めなくて共感してしまう、そんな魅力もある作品だと感じました。

『花のみぞしる』のスピンオフ作品は『花のみやこで』です！こちらもぜひ！